大阪地方裁判所 昭和59年(わ)84号 判決 1984年5月09日
裁判所書記官
東森隆一
本店所在地
大阪府東大阪市若江東町六丁目九番四七号
新光精密株式会社
(右代表者代表取締役宮脇一郎)
本籍
大阪市東成区大今里南六丁目二三番地
住居
奈良県生駒市萩原町九九番地の一
会社役員
宮脇一郎
大正一五年一〇月四日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官鞍元健伸出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
一、被告人新光精密株式会社を罰金五、五〇〇万円に、被告人宮脇一郎を懲役二年に、各処する。
一、被告人宮脇一郎に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人新光精密株式会社(以下「被告会社」という。)は、大阪府東大阪市若江東町六丁目九番四七号に本店を置き、プレス加工、金型加工並びにその製作販売等を目的とする資本金二、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人宮脇一郎は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人宮脇一郎は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げ及び棚卸の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が一億八四四〇万六二〇六円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同五六年二月二八日大阪府東大阪市永和二丁目三番八号所在の所轄東大阪税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一七六四万一八五円でこれに対する法人税額が五八五万九五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七二五六万五九〇〇円と右申告税額との差額六六七〇万六四〇〇円を免れ、
第二、昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が三億七〇七八万五五〇九円(別紙(二)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同五七年三月一日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一二一四万一七二三円でこれに対する法人税額が四五三七万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億五四〇〇万四三〇〇円と右申告税額との差額一億八六三万五〇〇円を免れ、
第三、昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が三億四八九二万四七四三円(別紙(三)修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同五八年二月二八日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億五八二三万八八七一円でこれに対する法人税額が六三八四万六八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億四三九三万四九〇〇円と右申告税額との差額八〇〇八万八一〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
一、被告人宮脇一郎の当公判廷における供述
一、同被告人の検察官に対する供述調書
一、収税官吏の同被告人に対する各質問てん末書五通
一、福井克彦、丸岡良雄、三好常信、浅井容子、水浦二郎、鎌苅克己の検察官に対する各供述調書
一、収税官吏の福井克彦(一三通)、丸岡良雄(二通)、三好常信、浅井容子、水浦二郎に対する各質問てん末書
一、収税官吏作成の査察官調査書一八通
一、被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通(証拠等関係カード検察官請求分番号467)
一、大阪法務局東大阪支局登記官木村純一作成の法人登記簿謄本
一、収税官吏作成の脱税額計算書三通
一、大蔵事務官中西久司作成の青色申告の承認の取消証明書
(法令の適用)
被告人宮脇一郎の判示第一の所為は、行為時においては、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があつたときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三の所為は、いずれも改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人宮脇一郎を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
被告人宮脇一郎の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示第一の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第二、第三の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に、各処すべきところ情状により法人税法一五九条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金五五〇〇万円に処することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 金山薫)
修正貸借対照表
新光精密株式会社
自 昭和55年1月1日
至 昭和55年12月31日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
新光精密株式会社
自 昭和56年1月1日
至 昭和56年12月31日
<省略>
<省略>
修正損益計算書
新光精密株式会社
自 昭和57年1月1日
至 昭和57年12月31日
<省略>
<省略>